新規フィルムコーティング剤 POVACOAT®
POVACOAT®は、ポリビニルアルコールとアクリル酸、メタクリル酸メチルの共重合体で、医薬品のコーティング剤、結合剤などに使用されています。POVACOAT®の特性は以下のとおりです。
- 酸素バリア性・防湿性があり、薬物の安定化に寄与します。
- 皮膜が緻密なので、防臭・苦味マスキング・ウィスカー防止の効果があります。
- 接着性が高く、コーティングでは剥離不良や刻印部の埋まりを防ぎます。結合剤では使用量の低減、溶出性の向上が期待できます。また結合剤に使用した造粒物の打錠においては、錠剤硬度の向上・スティッキングの抑制効果があります。
- 皮膜の伸展性が良く、錠剤の割れを防ぎます。また可塑剤を必要としません。
- 皮膜中の色素が安定なので、色あせを防ぎます。
- 速用性のコーティング剤で、他のフィルムコーティング剤と同等の溶出挙動を示します。
安全性
POVACOAT®を経口剤として使用するため、安全性試験を実施しています。ラットによる 試験の結果、最高非致死量は2,000mg/kg 以上、無毒性量(NOAEL)は 1,000mg/kg/dayであり、ほとんど吸収されず胎児への影響もないことが確認されました。
薬添規収載
平成24年12月4日薬食発1204第1号【「医薬品添加物規格1998」の一部改正について】により、新規収載品目『ポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体』として収載されました。
投与経路 : 経口投与
成分コード : 109120
マスターファイル
マスターファイルへの登録は、下記のとおりです。
*DMF登録番号 18033 (2005年1月登録)
*国内MF登録番号 219MF20003 (2007年4月登録)
使用実績
2008年7月にOTC製剤のコーティング剤として使用されたものが、塩野義製薬株式会社より発売されました。
これまでに日本国内で、医療用医薬品ではラベプラゾールナトリウム錠、アトルバスタチン錠、ドネペジル塩酸塩OD錠、オロパタジン塩酸塩錠、クエン酸第二鉄水和物錠に使用されました。また数多くのOTC製剤に使用されています。
特許
- 「新規コーティング組成物」(コーティング用途)
- 特許 第4680061号 (2011年2月10日登録)
- US 8,277,844 (2012月10月2日登録)
- EP 1657265 (2012年10月17日登録)
- 「新規コーティング組成物」(結合剤用途・分割出願)
- 特許 第5248564号 (2013年4月19日登録)
- US 8,552,102 (2013年10月8日登録)
- 「新規乾式固体分散体用基剤、該基剤を含有する固体分散体及び該分散体を含有する組成物」
- 特許 第5328643号 (2013年8月2日登録)
- 「インクジェットインク組成物」(インクジェット用インク用途)
- 特許 第2014-131402 (2014年6月26日出願)
コーティング例
POVACOAT®は乾燥しにくいため、コーティングの際には乾燥しやすい条件を設定して下さい。水ではなく低濃度のエタノール水溶液(30%以下を推奨)を用いてコーティング液を調製したり、タルクや酸化チタンなどの無機物をPOVACOAT®と等量以下の割合で配合することにより、乾燥が容易になります。コーティング条件の一例を、以下に示します。エタノールや無機物の量が多すぎると、皮膜の特徴が失われたり、ダスティングが発生しやすくなります。
装置 | パウレックコーター PRC-07(7L) |
---|---|
ノズル型式 | P-LAV |
ノズル口径 | 1.1 mm |
噴霧距離 | 170 mm |
アトマイズ空気量 | 120 Nl/min |
アイマイズ空気圧 | 0.28 MPa |
パターン空気量 | 30 Nl/min |
パターン空気圧 | 0.1 MPa |
錠剤仕込量 | 4.4 kg |
コーティング液 | POVACOAT® | 50% |
---|---|---|
タルク | 50% | |
コーティング液固形分濃度 | 16.7% | |
エタノール濃度(溶媒中) | 10% | |
操作条件 | 給気風量 | 3.5 m³/min |
給気温度 | 80℃ | |
錠剤温度 | 53℃ | |
排気温度 | 49℃ | |
スプレー液速度 | 30 g/min | |
ドラム回転数 | 18 rpm | |
コーティング効率 | 85% |
結合剤について
POVACOAT® を結合剤として使用すると以下の効果が得られます。
- 良好な成型性
- HPC-SLの半分量で同等の成型性 → 安価
- 同量使用での高い成型性 → 低打圧による打錠障害の防止や打錠機の負担軽減
- 良好な溶解性
- 容易な結合剤水溶液の調製
- PVA よりも速やかな溶出性
- バリア機能
- ウィスカー予防、吸湿速度の遅延、酸化予防 → コーティング量の軽減
可食性インク助剤
POVACOAT® を結合剤として使用すると以下の効果が得られます。
- 退色抑制
- 退色しやすい色素(特に染料)の色褪せを防止します。
規格
試験項目 | 規格 | 試験方法 | |
---|---|---|---|
性状*) | 基準に合格 | 官能試験 | |
確認試験**) | 基準に合格 | 呈色試験、沈殿試験、IR | |
粘度 | 4.4~6.6 mPa・s | 粘度測定法第2法 | |
pH | pH 4.5~5.5 | pH測定法 | |
純度試験 | 重金属 | 10 ppm 以下 | 重金属試験法第2法 |
アセトン抽出物 | 1.0%以下 | アセトン抽出物 | |
乾燥減量 | 6.0%以下 | 乾燥減量試験法 | |
強熱残分 | 0.5%以下 | 強熱残分試験法 | |
残存モノマー | アクリル酸 | 300 ppm 以下 | ガスクロマトグラフィ |
メタクリル酸メチル | 500 ppm 以下 | ガスクロマトグラフィ |
*性状 :
本品は、白色~帯黄白色の塊又は粉末で、においはないか、又はわずかに特異なにおいがある。本品は、エタノール(99.5)又はアセトンにほとんど溶けない。本品に水を加えるとき、混濁した粘稠性のある液となる。
**確認試験 :
(1) 本品0.5 gに水10 mLを加え、加温して溶かし、冷後、この液5 mLに、ヨウ素試液1滴を滴加し、静置するとき、液の色は暗赤色を呈する。
(2) (1)で得た液1 mLにエタノール(99.5)5 mLを加えるとき、白色~微黄白色の混濁を生じる。
(3) 本品の水溶液(1→20) 10 gに水酸化ナトリウム試液3滴を加え、よく混合する。この溶液をセレン化亜鉛の窓板に塗付し、乾燥して得た薄膜につき、赤外吸収スペクトル測定法の薄膜法により試験を行うとき、波数3360 cm¯¹、2940 cm¯¹、1730 cm¯¹、1575 cm¯¹、1435 cm¯¹、1245 cm¯¹、1195 cm¯¹、1145 cm¯¹、及びs1095 cm¯¹ 付近に吸収を認める。
お問い合わせ先
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